悪魔(ディアボロ)、降臨
———神々の恩恵を受けし世界。
日月は天地を照らし、河川は大地に恵みをもたらし、山岳は雄大にそびえ、風雲は恵みの雨を降らせる。
自然は豊かで、人々はその自然の中に組み込まれるように協調して生きていた。
そして人類は、四つの村を拠点に、農民は植物や家畜を育て、一般市民はその恩恵を受けている。
この世界は平和だった。そう、奴が現れるまでは…
一ヶ月前。突如として東に謎の塔が出現する。
その日から世界の平和は脆くも崩れ去った。
「皆の者よく聞け!!この世界は、たった今からこの私、”魔王・ジョーカー”が支配する!
汝らは、我らとその僕(しもべ)に従順に従え!」
「ジョーカー」と名乗るものによる突然の世界支配宣言。
同時に、世界各地に六人の術士・魔物が放たれた。
———この世界に存在する不思議な力「魔術」を使う、特殊な生物を「魔物」といい、
同じくさまざまな理由で魔術を使う人間のことを「術士」と言った。
放たれた術士たちは、各地の魔物を手なずけて、次々に配下としていった。
また、各地に点在する村を侵攻していった。
人類は支配されてしまうのだろうか……
「————お邪魔します」
茶色のツナギを着た男が、扉を開け、部屋に入る。
そして部屋奥の机まで歩き、徐に跪く。
「おお、ブラウンか。待っておったぞ」
部屋の奥の老人がそう答える。彼こそ、「大地の村」の村長である。
「…はい」
ブラウンと呼ばれた男が顔を上げ、そう答える。
「今日呼んだのは、他でもない。お前にジョーカーを倒してほしいのじゃ。」
「!!」
ブラウンが驚く。老人はさらに続けて言う。
「勿論ただでとはいわない。魔王討伐に成功したら、万の金と次期村長は約束しよう」
「…本当ですか?」
「勿論じゃ。わしがウソをつくと思うか?」
「……でも、何故私が?」
「いや、お前だからこそ行ってほしいのじゃ。何せ、お前は村一番の能力者じゃからな」
「わかりました」
——ブラウンは、生まれたときから魔力を扱える体質である「先天術士」だった。
それゆえ、魔力も鍛えやすく、いつの間にか村一番の能力者となっていた。ちなみに属性は地。
と、そのとき、ドアを強烈に開く音がする。その後、鎧を着た男が数人ほど村長室に足音を立てて走ってきた。
「大変です!ジョーカー一味と思わしき集団が、字山(あざなやま)に来たかと思うと、突然の濃霧が発生し、
兵の二割がやられました!」
「何!?それは本当か!?」
「はい、私たちは逃げるので精一杯でした!」
「そうか…………」
そして村長は、決断を下す。
「よし、ブラウン!おぬしが行ってこい!」
「———!」
ブラウンが驚いた顔をする。
「今回は、ジョーカー討伐の上での最初の試練にもなる…ここで倒せなかったら所詮はその程度、お前には任せられん!
と、言うわけでがんばって追い払うのじゃぞ!」
「了解しました!」
果たして、ブラウンの旅は成功するのだろうか。