伝承が現実になる日
この国々には、こんな言い伝えがある……
はるか3000年ほど昔。強い七匹の神獣がいた。
そいつらはみな小さい妖怪たちを支配し、暴虐の限りを尽くしていた。
一般人はおろか当時の仙人(この世界では「概念を召喚する能力者」)ですら手を焼く力を持っていた。
あるとき、七匹の神獣たちは思い上がって、人類の創造神である天神「女渦(ジョカ)」の住まう島を
我々七神獣の住居にしよう、と企てた。
それにいち早く気づいた女渦は、天神の力を使役し、七つの神獣を七地域に封印した。
一つは、「雷村(いかづむら)」
一つは、「北狄(ほくてき)凍結の地」
一つは、「貫天塔(スカイスクレーパータワー)」
一つは、「ガルディアン洞窟」
一つは、「海底神殿」
一つは、「九竜島(くりゅうとう)」
そして一つは、「天空の玄都(ダークシティ) ペル=シュテリオム」
封印を果たすと、女渦は島へと帰っていった。
そして時は経ち、現代………
ココはとある村「リトスス」。
この村は、七神獣の内の一匹が封印されている「ガルディアン洞窟」から2kmほどで行けるため、
それを見に行く人たちの宿屋ともなっている。
だが、あるとき。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
大きな地鳴りとともに、大地が、否、乾坤が揺れだす。
「なんだどうした!」
「何が起こったんだ!!」
村のそこらじゅうからざわめきが聞こえる。
食器棚が揺れる。机が揺れる。中には食器の割れる音も聞こえた家もある。
だが…揺れはものの1分ほどでおさまった。
「おさまった…意外と早いな…」
「しっかしこんな大地震、初めて体験したな…」
「そうだね(便乗)」
「さて食器…」
村に若干の混乱が招かれた。
しかし、これが中央国すら巻き込む大波乱の幕開けになるとは、
誰も思わなかった。
ところ変わって、ココは中央国…「仙国 アル=アジュラ」。
時間は謎の地震の1時間ほど後といっていいだろう。
「大変です陛下ああああああ!!!」
よろいを着た兵士のようなものが駆け寄る。
「ん?何かあったのか!?」
奥のちょっとした高台の椅子に鎮座する、その陛下と呼ばれた男が答える。
「陛下!古代に封印された古代の七神獣が復活した模様です!
先ほどの大地震は、古代獣が目覚めたときに起きた魔力の地震だと、
八卦運勢省(国を魔法的に観測する省)がおっしゃってました!」
「むむ!そうか!直ちに征服将軍と十天君を出げ…」
「その必要はありませんわ。兵をむやみに出しては勢力を失うことになりますわ。
ここは、民間兵の力を借りるほうがよろしいでしょう…。
ハンターギルドを建設し、登録者に神獣を討伐させる『ハンター制度』がよろしいかと思いますわ~」
怪しげな邪気を放ちながら、王妃が”陛下”の椅子に近づいてゆく。
彼女がそういうと、そこにいた人が、皆虜になったかがごとき虚ろな眼と化した。
そしてにやり、と彼女が笑う。
「いやはや、ダッキの策はさすがだなぁ」
と、”陛下”。ダッキと呼ばれた女は、あふれ出る邪心を隠しながら、照れたような顔をした。
一週間後。
あの大地震から、リトスス村ではあまり変わったことが起きなかった。
言うとすれば、今復興事業のようなものをしている。
……しかし。
村の中心の役所っぽいところのスピーカーから、声が放たれる。
「えー…今日は残念なお知らせと、おそらく嬉しいであろうお知らせがあります」
村が、ざわめきを帯びる。
「残念なお知らせは、なんと、古代の七神獣が復活しました。」
「古代獣だって!?」
「そんな馬鹿な!おとぎ話じゃなかったのか!」
「国と村長は何やってるんだー!」
「国民が死ぬんだぞーー!!!」
畑や、家。村の各々から、非難の声が上がった。
「幸い、今のところ人を襲うなどの行動を見せていません。
ただ、危ないのは確実ですので、一般の方々は、ガルディアン洞窟に近寄らないでください。
―――――そして、おそらくいいほうの知らせです…
……えー、古代獣を討伐するため、『仙国一斉ハンター制度』を設けるとの勅令があったので、
この村でもハンターギルドを設け、ハンターを募集することになりました。
なりたい方は、至急区役所に来てください。」
……それを自宅で聞いていた双子の少年がいた。
一人は「正男」。正義感の無駄に強い、農家の少年であった。
もう一人は「浩二」冷静な判断のできる(が、やっぱり正義感が若干強い)少年。
二人は、不思議な力を持っていた。
正男は、手の平から炎を出す能力。
浩二は、腕を振るとそよ風を引き起こす能力。
二人は、中学生の頃、その能力の仕業で、生徒からいじめられていた。
彼らはその頃、同じく学校でいじめられていた不思議な力を持つもの…
ザトシ(黒崎聡)とクリス(クリス・ライト)とよく徒党を組んでいた。
特にザトシは人をにらむことで体調不良を起こすことができたり、
影が驚きの黒さだったりしたため、4人の中でもひどい嫌がらせを受けていた。
(ちなみに全員体育の成績だけはやたら高く、他は中ぐらい。)
彼らは悩んでいたのだ。自らの能力をどう社会に生かそうか。
と。ちょうどそのとき起こった復活とハンター制度。
それに飛びつかない手はないと言わんばかりに、ハンターギルドと契約し、ハンターになろうとした。
「はんたー…せいど…?」
浩二が言う。
「ああ、聞いてるとどうやら、復活した七匹の神獣を討伐する制度らしい。
装備は国が調達してくれるらしいな。っていうかお前今聞いてただろ」
と、正男。
「でも、二人だけじゃやっぱ無理だよ、この村に協力者がいるかどうかわからないし」
「ううん…」
そのとき、正男はふと思った。
……そうだ、アイツを呼ぼう。
世界を堕落のどん底に陥れた神獣相手に二人だけじゃあまりにも貧弱。
そう考えた正男は、同じ謎能力者である旧友を呼ぶことにした。
「そうだ!ザトシを呼ぼう!」
「おわっと、いきなり何言い出すんだよ、兄さん。」
「アイツも不思議な能力使えただろ?」
「アイツは…たいした能力は発動できなかったよ?」
「う…でも二人より三人のほうがいいだろ?」
「ま…まあそうだけど…」
「…そうと決まれば早速ザトシの家に行くぞ!」
そういうと正男は爆速で外へ出て、ザトシの家へ向かった。
「待ってよ兄さーん」
(ちなみにクリスは中央国(アルアジュラ)の高校に受かり、進学したので、この村にはいない。
そしてザトシはニート。)
…ザトシの家。門の前に正男たちは立つ。そして戸を叩いた。
「ザトシー、いるかー?」
ガチャリ、扉が開く。
「おお正男ー!久しぶりだなー!」
やつれた風貌の少年が飛び出してきた。ザトシだ。
「見ない間にずいぶんとやつれたね…」
と、浩二。
「え?いや、元からだろ。」
ザトシが言う。
「…それで、本題なんだけど。」
「ん、なんだ?」
「俺たちと一緒にハンターにな ら な い か」
「めんどくさいから断る」
「「えー」」
「嘘だって、行くって」
「ホント!?」
「うん、だってこのごろ暇だし。ゲームやっててもつまらないし、かといって買いに行くのは面倒だし」
「(そんな理由で………)」
何はともあれ、ザトシを(一瞬で)仲間にした正男たち。
これから、彼らすら予測できない波乱の旅が始まることも知らずに…。