能力覚醒
「クッ!ハッ!喰らえ!」
彷刻陣修行、最終日。
中では、今正男と申公豹、浩二と黒点白虎が戦っている。
「フッ、カスリもせんぞ?もっと早く来い!」
降りかかる正男の拳を、申公豹が軽々とよける。
と。
「コンニャロー!!」
そう叫び正男が殴りかかると同時に、正男の腕が炎を纏い始めたのだ。
「何…グハッ」
驚いた申公豹は、かわす術を忘れて攻撃を受ける。わずかに後ろに後ずさる。
「……腕が、燃えた!?」
正男が驚くと同時に、正男の腕の炎が消える。
「あっつ………それは…『熱腕燃脚(バーンアームズ)』だな」
「バーン…アームズ……?」
「要するに、腕や脚を燃やすことができる能力だ。」
「そうなんですかー…」
「ちなみに、技を発動している本人だけは熱く感じないぞ」
「そうなんですかー…」
同時刻。
「くらえ!」
飛び上がった浩二がクロに向かって極小ナイフを突きつけながら真上から落下する。
「無駄だよ」
それをクロは歩いてかわす。
「風属性の使い手のくせに遅すぎるよ。到底ボクの早さにはたどり着けないね」
と、クロがあざ笑う。
「…ッ……!黙…れッ!」
と言って、むやみにも浩二が拳を振りかざして突進する。
と、その瞬間。浩二が緑青色の風をまとい、その速さを増した。
「はや…グハッ!」
殴りつけた浩二は、言葉を失い、そこに立ちつくす。
殴られたクロは、数歩後ずさる。
「あー…コレは能力だね。うん。」
「能…力……?」
「『纏風迅走(てんぷうじんそう)』だね。風を纏うことによってそれを推進力にして走る能力だ。」
「やった…!僕も能力が使えたぞ!!」
「さて、次はザトシのローテーションだな…」
申公豹がそうつぶやき、クロを呼んでザトシのほうに向かった。
数十分後。
「喰らえ!」
ザトシが上空から蹴りを食らわす。
「フン、きかんな!」
申公豹が右腕でガードする。
後ろに飛びのくザトシ。
次の瞬間、申公豹は身体の異変に気づく。
なんと、ザトシに蹴られた部分が禍々しい紫色に変色していたのだ。
「チッ!」
申公豹は即座に右手にひょうたんを召喚し、その中から紫色の薬丹を取り出す。
それを噛み砕いて変色した部分に塗ると、色が瞬く間に元に戻ってゆく。
「これは…!?」
「…どうやら、お前も能力に目覚めたようだな。」
「……!!」
ザトシが驚く。申公豹が続けて話す。
「基本的な毒の能力だな。あと、影を操る能力もあるな。とりあえず『影よ動け』って念じてみろ。」
申公豹がそういうと、ザトシが目を瞑った。数秒後、ザトシの影が、うごめき始める。
「…目を開けてみろ」
申公豹に言われ、ザトシが目を開ける。そこには歪な球状に変化した影があった。
「それがお前のもう一つの能力だ。とりあえず頑張れば影は武器になるぞ」
「…わかりました!」
こうして三人の修行は終了した。いよいよガルディアン洞窟への侵攻だ!